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巻雲先生

うっすら高くたなびく雲は
君が目指した旗印
夏には届いたあの高さ 
今は見上げてなお遠し
時間が巻いて戻るなら
早く来い来い夏休み
誰もが願う夏の夢
ここでつけるよ君との差

ああ、夏休み
もうさぼらない だからさあ
先生、お願い
時間を巻いて
僕にチャンスをくださいな

遠くで笑う巻雲は
冷たく僕にこう言った
時間はね、戻らないから意味がある
戻れないから価値がある

君もね、誰でもね
何かを失い強くなる
涙を浮かべて空を見て
大きくなっていくんだよ

あの日、あの時、あの空の下
僕は偏差値受け入れた
そう、あの巻雲が
届かぬ夢を教えてくれた
ありがとう、巻雲先生

あれからどれだけ経っただろうか
あの日の秋の遠い空
僕は今でも見上げてる
少しは強くなれたかな
君にもわかる時が来る
失って傷つくからこそ
明日が来る
流した涙は
そう、あの空の上
また巻雲先生になるんだよ

▼批評・マエケン先生▼
 秋の雲には「巻雲」または「絹雲」とも書くが、「けんうん」と呼ぶ、雲の中では非常に高い位置に発生する雲がある。
ただ、古くは「まきぐも」と呼ぶこともあり、このポエムでは、あえてそれを使っている。
しかし周知のように夏の雲は「入道雲」などを代表するように、かなり低い位置に発生することが多い。
作者は受験生の頃、夏に偏差値をあげようと考えていたらしい。
志望校に受かるためにはあと偏差値いくつを夏休みであげよう…などと、皮算用していたのかも知れない。
しかし様々な誘惑が作者を机には向かわせなかったのだろう。
作者が高校野球が好きだったことを考えれば、朝から夕方までテレビの前にかじりついていたことは容易に想像がつく。
ポエムでは「夏には届いたあの高さ」とあるが、
「夏の雲=まだ手が届きそうな高さにある目標」を表している。
しかし、あっという間に夏はすぎ、季節は秋に変わる。
偏差値は上がることなく、雲はもう「秋の雲」に変わっていたのだ。
この雲が、「巻雲」として登場している。
雲の高さは上がり、もう届かないその高さ。
このことは、「秋の雲・巻雲=もう届かない高さにある目標」を表している。
また、「巻雲」は先生となって、時間が戻らないことを作者に語りかけるのだが、
おもしろいのは作者が「巻雲」にかけて、時間を巻き戻せるのではないかと考えていることが想像できる点だ。
最後には時間が戻らないことがわかった作者は
失敗を経験した結果、きっと「少しは強くなった」のかもしれない。
 最後に作者は、「君」という人物に語りかけている。
おそらくは大人になって先生になった作者が教え子に語りかけているのだろう。
「流した涙は、またあの巻雲先生になるんだよ」という部分は、
作者が「失った時間への後悔」は、まるで世代を超えて引き継がれる、「普遍の事象」のようなものだと、言っているように聞こえる。
これは、先生になった作者が毎年繰り返される受験生の涙を見てきたからなのかも知れない。
 このポエムでは、常に時間に支配されているこの世界で生きる私たちの営みが有限であるにもかかわらず、
地球上で、私たちを取り巻く水の存在は、雲→涙→雲と普遍に移り変わる無限の存在、私たちの小さな営みを見守る先生のようにも例えられている。
作者は、巻雲先生の存在に気づき、その源である大きな「水の循環」の上に私たちが存在していることを、しかし、私たちの時間は循環しない、巻き戻らないということをまた次の世代へと語り継ごうとしているのだろう。
そう、今あなたがこうしている時間も二度ともどらない…。 あなたはここから何をして生きますか?

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